素子構造と計測原理

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1 素子構造

接触力と接触面積を取得するセンサ素子は、図1のように非常にシンプルな構造です。
硬さの異なる2枚の発泡ウレタンシートと3枚の導電繊維を交互に重ねるだけです。
この3cm×3cmの導電繊維の領域がひとつのセンサ素子になります。
発泡ウレタンをはさんで向かい合った導電繊維の間の静電容量(C1とC2)を計測します。




図1 センサ素子断面図
厚さ2mmの軟らかい発泡ウレタンと
硬い発泡ウレタンを重ね、
3cm×3cmの導電繊維3枚ではさんだ構造。
導電繊維間の静電容量C1とC2を計測する。


2 計測原理

この構造の静電容量を計測することで接触力と接触面積がわかることを、シミュレーションによって示します。

図2 問題設定
円形の接触面内で一様な表面応力分布σを考えます。
知りたいのは接触力Fと接触面積Sです。
通常の圧力センサにはSを知る能力はありません。



図3 非線形弾性
発泡ウレタンは軟らかい(ヤング率とポアソン比が小さい)ので、
強く押されると限界まで圧縮され、それ以上圧縮されなくなります。
その性質が、下式のエントロピー弾性* で表されると仮定します。
軟らかい発泡ウレタンλ1は弱い圧力でも限界まで圧縮されます。









図4 シミュレーション(静電容量の変化)
非線形弾性硬さの違いのため
(ΔC1, ΔC2)はD(Sの直径)によって異なる曲線に載り、
またFが大きくなると原点からの距離が大きくなります。
このプロットをあらかじめ調べておけば、
静電容量から接触力と接触面積を知ることができます。


* エントロピー弾性 :
もともとはゴムの弾性を記述するための式。 発泡ウレタンの非線形弾性と挙動が似ているため、シミュレーションで採用しました。
参考文献 : G. R. Strobl: The Physics of Polymers: Concepts for Understanding Their Structures and Behavior, Chap. 7, Springer, 1997.

公開 : 2005/04/01
更新 : 2005/09/22
星 貴之 : star(at)alab.t.u-tokyo.ac.jp